2011/07/28

盲導犬歩行指導員になる旅

視覚障害者をサポートする盲導犬を育てる
盲導歩行指導員というお仕事。
先日「盲導犬歩行指導員になる旅」をプロデュースすべく
盲導犬歩行指導員の1日体験をしてきました。

訪問先は(財)アイメイト協会
日本で初めての盲導犬「チャンピイ」を育成し
全国に10団体ある盲導犬団体の中で
一番多くの盲導犬を世の中に送り出している団体です。














アイメイト協会では
あくまでも「人が主役であること」を伝えるため
盲導犬のことを「アイメイト」と呼んでいます。
「盲目の人を導く犬(盲導犬)」を育てるのではなく
「私の愛する目の仲間(アイメイト)」と言う意味が込められていて
その想いは活動のいたる所で表現されています。

仕事旅行は下記のようなスケジュールで進みました。

9:00 ◇アイメイト協会集合
・自己紹介/体験の流れの確認
9:30 ◇施設見学
・犬舎/研修施設の見学
・排便/ブラッシング風景の見学
10:00 ◇歩行指導の同行
・外に出て歩行指導に同行します。
11:00 ◇盲導犬についてのレクチャー
・盲導犬の概要について学習
12:00 ◇昼食
・盲導犬訓練士の仕事について
13:00 ◇盲導犬体験
・アイマスクを装着し、盲導犬と歩行
14:00 ◇訓練風景の見学
・盲導犬の訓練の様子を見学
16:00 ◇仕事旅行終了!

◇施設見学

アイメイト協会では現在約50頭の盲導犬を飼育しています。
犬舎を訪れると、多くの犬が気持ち良い顔でブラッシングを受けていました。

ブラッシングは歩行中に毛が飛び散らないように
毎日欠かせない作業との事で
口臭を発生させないよう「歯磨き」も定期的に行っています。

盲導犬を使わない周りの人を不快にさせないように
犬の「毛」や「臭い」を常に気を使っている姿が印象的でした。














◇歩行指導の同行

アイメイト協会では、盲導犬の主人となる視覚障害者に対して、
盲導犬との歩き方から生活の仕方に至るまでを学んでもらうため
28日間の研修合宿を行っています。

その研修のうち、視覚障害者の方が盲導犬と共に
外に出て、街を歩く練習に同行しました。

歩行練習は「ルート」の確認から始まります。
盲導犬は歩くことをサポートしてくれますが
目的地へ連れて行ってくれる訳ではありません。
主人である視覚障害者が頭の中にルートを描けていないと
目的地に行くことはできないのです。














アイメイト協会では「視覚障害者の自立」を目的としているため
歩行練習中、スタッフは視覚障害者を助けることをしません。
それどころか、わざと
「犬の前に立ってみたり」
「犬を触ってみたり
と、スムーズな歩行を妨げます。

これは、今後一人で社会に出たときに
さまざまなトラブルに対して対応できるための訓練なのだとか。
「温かい厳しさ」を忘れないようにしているとの
スタッフの方の言葉が印象的でした。

また、歩行練習中に驚いたことがありました。
犬は色を見分けることが出来ないので
「信号が分からない」ということです。
盲導犬は周囲の様子や自動車の通行量を用心深く観察しながら
道の横断を判断していました。

盲導犬が居ると「あまり声を掛けてはいけない」という認識がありましたが
信号待ちの時には、特に周りの方からの
「お手伝いをしましょうか」と言う、ひとつの声かけがとても助かるのだとか。















◇盲導犬についてのレクチャー

歩行訓練を終えた後
盲導犬の概要について学習をしました。
その中で自分が「盲導犬」について
知らないことや間違った知識を持っていたことに驚きました。

「盲導犬」と呼ばれている犬について
日本に明確な基準や資格はありません。
統一の組織も無いため、全国に9つある盲導犬団体が
それぞれの「定義」で盲導犬を飼育されているとのこと。

そして「お金」についても
各盲導犬団体は募金や寄付によって運営されていますが
団体ごとに使用方法は様々なこと。

盲導犬を一頭育てるための費用として
アイメイト協会では「約600万円」掛かっていますが
他では「約4,000万円以上」という団体もあるらしく・・・
明確な基準がないことに
業界としての問題を抱えているようでした。















◇盲導犬体験

アイマスクをして盲導犬と一緒に歩きます。
「普段と一緒の速度で歩いて下さい」と促されながら
盲導犬と歩きますが・・・
恐怖心がどうしてもぬぐいきれず
探り探りの歩行になっていまいました。

普段の生活が視覚にいかに頼って生活しているかを
身をもって感じると共に、
頭の中に周りのイメージが出来ていない状態で
歩行する難しさを実感しました。

◇盲導犬の訓練

施設に来て間もない犬達は
訓練士の言うことを聞こうともしてくれません。
そこから少しずつ行動を指導し
一つ一つの行動に対して、少し出来たら褒める。
と言うことを繰り返し、犬に理解させながら
完成形に近づけていきます。

アイメイト協会では飼育奉仕の元で育てられた、盲導犬のたまご達を
約4ヶ月間の訓練を行い1人前の盲導犬に育てて行きます。

訓練期間に関しても、盲導犬団体それぞれの規定期間があるようですが
全盲者が単独歩行できる盲導犬を「4ヶ月」で訓練する
というのは日本で最速だそうです。
少しでも長い間「盲導犬」として過ごしてもらいたいという想いから
試行錯誤を経て今の訓練期間で盲導犬を育成されています。














また、盲導犬はストレスから長く生きないのでは?
と思われることもあるようですが
主人と一緒に過ごす分、コミュニケーションも多く、健康的な生活になるため
結果として普通のペットとして飼われるよりも長生きする事が多いとのことでした。

訓練士の方々とお話をする中で印象的だったのが
仕事をしていて辛いのが
盲導犬に対して、世間との認識にギャップを感じる事だとか。

真夏に街中で訓練を行っていると、後ろから
「この暑いのに訓練させなくてもいいじゃない~」
「あの犬ガリガリよ、かわいそうね~」
と背中から軽はずみな心無い言葉を掛けられることも少なくなく
その度に、言葉にならない悔しさを感じているようです。

しかし、28日間の研修期間を経て
盲導犬と一緒に帰っていく、
視覚障害者の方々のうれしそうな顔を見ると
何者にも変えられない充実感を得られるのだとか。

「盲導歩行指導員になる旅」を通じて
この仕事は「犬を育てる」こと以上に「人を育てること」が大切なことを実感しました
視覚障害者の方々が自立して、よりふつうに生活できる社会を
自分なりに考えて頂けたら幸いです。

自分にとってもいろいろな気付きを与えてくれた旅でした。
(財)アイメイト協会の皆さん。
どうもありがとうございました。

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